2023年 NHKプロデューサーから話を伺う

 2023年6月19日の鈴木ゼミにおいて、3回生の学生さんが、NHKプロデューサー兼解説委員の竹内哲哉さんに話を聞きました。竹内さんは3歳4カ月の時の急性脊髄炎の後遺症のため車いすで生活をしています。竹内さんには、生い立ちから始まり、NHK入局時のことやハートネットTV・パラリンピック特集番組や解説委員の番組作りのこと、障害や福祉領域におけるメディアの役割などの質問にお答えいただきました。

 今年度の鈴木ゼミでは、3回生の希望に応じて、1)福祉とメディア、2)家族支援、3)インクルーシブ教育に関わる関係者に話を聞き、まとめる活動をしています。メディア班の学生たちは、将来メディア領域で働くことを希望している学生もおり、福祉や障害への理解に向けてメディアがどのような役割を果たし得るのかということに強い問題意識をもっていました。質問内容は春学期のゼミ期間中に、事前に調べたことや学生同士で議論したことを踏まえて準備されました。

 障害のある当事者が番組制作に関わることの意義について、竹内さんからは制作者の意識が変わることが指摘されました。竹内さんは「感じられるか感じられないかっていうのは、当事者じゃないと分からないこともあるかもしれない」と話されておりました。NHKの職場には、これまでの人生において障害のある人と関わった経験のない人が多くいるため、こうした中で障害のことを扱った番組を制作するためには、障害のある当事者がその場所にいるというだけで大きな効果が生まれるということでした。

 学生たちが最も関心のあるメディアによって福祉や障害への理解を深められるのかという質問については、パラリンピック番組を通して説明されていました。特に東京パラリンピックでの報道は、マイノリティーをターゲットにしているのではなく、できる限り多くの人に見てもらえるように作られており、障害のない人が障害のある人の理解を深める最大の手段のひとつとして位置づけられたということでした。しかし、「スーパーエリート障害者」のイメージが先行すると、「スーパーにしなければいけない」あるいは「スーパーではない」とされる人たちとの分断を生み出すリスクもあり、「すごく悩ましい」と話されていました。また、多くの人から関心を持たれないテーマをマジョリティーに向けて番組で扱うには、それなりの工夫をしないと見てもらえないので番組を作る上での難しさも指摘されました。

 竹内さんは、「メディアは弱者に立つべきだと僕は思っている。(中略)。僕は声なき声を拾って、それをきちんと伝えていくってことが、本来の役割なんじゃない」と話されていました。学生がこれから関わろうとする福祉は、まさに「弱者に立つべき」領域に他なりません。弱者の側に立つメディアと福祉が社会を変えるためにどのように連携しうるのか。学生たちには、引き続き、この難問について自分たちなりに考えてもらいたいと思います。

写真 zoomでの学生によるインタビューの様子

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