2023年 京都トライアングルの母との交流と訪問

 2023年7月3日に3回生ゼミで京都トライアングルの元代表で、タウン症児の母である佐々木和子さんにお話を聞きました。また、2023年7月9日には、佐々木さんの息子で自立生活している元晴さんの自宅を関心のある学生数名と訪問し、その後、ダウン症児の親の会である京都トライアングルによる親子相談の様子を見学しました。

 佐々木さんからは、息子の元晴さんが誕生してから、京都トライアングルの活動についてお話をしていただきました。元晴さんは、小中学は普通学校の普通学級に通い、高校は一般の通信制の高校に行き、卒業後、しばらくしてから自立生活を始め、一般就労の場で働いています。障害の程度は中度ですが、佐々木さん親子は、障害のない人たちと共に生きることを重視してきました。私たちとしては、このように共に生きるということがなぜ重要だったのか、そして、これはどのようにして可能になったのかということをお伺いしました。

 息子さんが生まれたときに、ダウン症についての知識がなかった自分自身にショックを受けたと佐々木さんは語ります。多くの親はダウン症の子が生まれたことに対してショックを受けるのに対して、知識のない親自らのことにショックを受けたということ自体に、障害のある人のためには、受け入れる側の社会や健常者が変わる必要性があることが示されています。その後、佐々木さんは、社会にある壁を解消するために「闘い」の日々が始まったこと、それでも、今から振り返ると「あの子を育てて、苦労と思ったことがない。なんて面白いというか楽しい。とにかく面白い」とにこやかにお話されました。

写真:ゼミで京都トライアングルの元代表の佐々木さんに学生さんが質問をしている様子 

 元晴さんは、小中学では普通学校の普通学級に通学してきました。このとき、「まず一番困ったのが校長。校長は、もともと入れる気なんかなかったから、ものすごい抵抗にあったし、それを強引に入れたわけだから。それが困ったこと」だと佐々木さんは語ります。そして、こうした抵抗にも関わらず、元春さんを入学させることができたのは、東京を拠点に活動する「障害児を普通学級へ全国連絡会」の支えがあったからだと言います。

 佐々木さんは、子どもたち同士の関わりこそ重要であり、それが現在、元治さんが一人暮らしをすることにつながっていくといいます。

 「それはもう大人が介入なんかしなくていい。もう先生なんか邪魔。先生がいないほうが、子ども同士でちゃんと学んでいくので、一緒にいるのが当たり前になってきました。元治が自ら1人暮らしを選んだのは、そんなあたりから生まれたんだなって。」

 中学3年生のときに高等養護学校に行くための条件である支援級に行くことを担任教員に勧められましたが、それは拒否されました。中学校を卒業した後は、通信制の高校に通うことになりました。それは、養護学校ではなく、一般の高校に行くこと自体が佐々木さんにとっては重要なことだったからでした。その後、元晴さんは自宅で生活しましたが、35歳のときに一人暮らしをすることになります。このときに6歳離れた姉の1人暮らしが大きかったといいます。姉が18歳で大学に行くために家を出た際に1人暮らしをしている部屋に元治さんを連れて行った際に、「顔が輝いてんねん、びっくりした」ということでした。

 ただし、一人暮らしをするためにはヘルパーや住宅の確保など様々な取り組みが必要になります。このときに大きな支えとなったのが、障害当事者団体である日本自立生活センターでした。ここで、障害当事者と出会い、彼らの支えを通して、自立生活を実現させていきました。そして、HELPというスーパーで一般就労をしていますが、これを紹介してくれたのは、普通学校のときのPTAのお母さんということでした。普通学校での出会い、そして、社会一般での様々な団体の支えを通して、元晴さんの自立生活が実現されたことを私たちは学びました。

 7月9日の午前中に、トライアングルの取り組みに関心のあるゼミの学生さん数名と共に元晴さんの自宅を訪問しました。元晴さんからは、一人暮らしの楽しさを多く話していただきました。好きな競馬の騎手のことやCDの話し、普段、HELPという店で就労していることや旅行に行ったときのことを話していただきました。学生たちは、中度の知的障害があっても、親に頼ることなく自ら様々なことができること、これによって、母親も子から自律できるということを学ぶことができました。

 写真:元晴さんとゼミ生数名とが話をしている様子

 7月9日の午後には、京都トライアングルの親子相談の様子を見学させていただきました。このときは、数組のダウン症児の親子の悩みに、京都トライアングルのメンバーである佐々木さんや島嵜さんが相談に応じていました。例えば、言葉がなかなか出ない娘に対してどのように接すればよいのか、ということが相談されていました。佐々木さんからは、この子なりの表現する方法を大切にすることや、発達が遅れていても他の子と比較しないことが重要だということが語られていました。島嵜さんからは、それでも、他の子ども比較してしまい、発達の遅れを心配することも親であることも話されていました。それぞれが自らの経験を踏まえて話されているために説得力があると感じました。

写真:京都トライアングルのメンバーと学生たちの様子

 これらの経験を通して、学生たちは障害のある人が障害のない人と共に生きていくことを支えるためには、親がどのような思いをもち、どのような支えが必要なのかということを学ぶことできました。交流と訪問の機会を提供して下さった京都トライアングルの皆様には改めて感謝申し上げます。

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