2023年 パンジー・メディアとの交流と訪問

 7月17日(月)にゼミ3回生のメディア班の学生たちが、社会福祉法人創思苑のパンジー・メディアのディレクターである小川道幸さんと、当法人の理事長の林淑美さんにお話を聞きました。また、9月12日(火)には、私のパンジーでの調査に関心のある学生数名も同行し、パンジー・メディアの活動を見学したり、関係者と意見交換をしたりしました。パンジー・メディアは、東大阪市で知的障害のある当事者がインターネット放送を用いた番組を制作しています。この活動を通して、自分たちの思いや考え、社会への問いかけなどを発信しています。

 パンジー設立の経緯やメディア活動の特徴についてのお話をしてもらいました。小川さんは、これまでアマゾンや山々といった大自然を舞台にメディア制作を行ってきていて、パンジーと出会う前は知的障害のことは知らなかったということでした。それでも、異なる文化と出会うという感覚を大事にしていると話されます。こちらの価値観を相手に押しつけるのではなく、相手の文化から学ぼうとする感覚は、これまでの活動と共通する姿勢でした。パンジーでは、設立当初から、健常者ではなく、知的障害のある当事者の視点から活動を行うことを大切にしてきており、小川さんの当事者の文化を大切にする姿勢とパンジーの理念とが重なるかたちで、活動が行わていることを感じました。 

写真:3回生の学生たちがパンジー関係者にインタビューをしている様子

 パンジーメディアの番組の構成は4つあります。第一に、『パンジーの眼』であり、これは今のニュースを伝えるものです。第二に、『私の歴史』でありその人の生活史を語るものです。第三に、『パンジーキッチン』で、知的障害者でも理解できる料理のレシピを紹介するものです。最後は、自由で、ドキュメンタリーやドラマが制作されています。

 12日には、「パンジーの眼」のリハーサル現場を訪問させていただきました。番組制作においては、プロのメディア制作スタッフではなく、当事者とスタッフが協力して行っています。機材を扱うこと自体も当事者と職員が行っています。プロの関係者が関わると、健常者の価値観で作られてしまうので、それを回避したということでした。

 例えば、知的障害のある当事者がキャスターをしたり、スイッチャー(カメラの切り替え)を担当したり、音の敏感な視覚障害のある当事者にはノイズチェックをしてもらったり、アシスタント・ディレクターとして指示を送っている当事者もおりました。当事者に応じた支援も提供されています。第2カメラの操作を担当している知的障害のある当事者に、第1と第2カメラを担当する職員が必要に応じて支援を行なっていました。


写真 知的障害のある当事者がカメラを担当している様子

 リハーサル後に、学生たちとパンジー・メディアの制作に関わる当事者とお話をする機会をもちました。学生からは、他に行いたい役割はないかという質問が出され、当事者からはディレクターを行なってみたいことや、編集をやってみたいことなどが出されていました。これらは今は小川さんが行っていますが、将来どのように当事者が行えるのか、とても楽しみだなぁと思いました。

 学生からは、パンジー・メディアの当事者が生き生きと活動をしていることがとても印象に残ったようでした。学生たちは、知的障害のある当事者が機材の担当といった裏方の役割を担っていることに大変感銘を受けていました。キャスターといった華やかな役割を当事者が担うことはありますが、難しい機材の操作を支援者の助けを借りながら行っていることには驚いているようでした。

写真 パンジーの当事者と学生とが懇談している様子 

 訪問終了後に、学生からは、「パンジーの映画をゼミで上映会をしよう」、という声があがりました。学生にとって、とても印象に残る訪問だったようです。これからが楽しみです!パンジーの皆様、ありがとうございました。

 

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