2023年 学生主催のシンポジウム

 2023年12月18日の4限(14:55~16:25)にR201にて、鈴木ゼミ3回生による学生主催のシンポジウムが行われました。3回生はそれぞれの関心と希望に基づき、1)大阪豊中市インクルーシブ教育、2)京都市トライアングルの家族支援、3)東大阪市パンジーのメディア活動、というテーマで研究をし、成果の報告をしました。私は学生の関心と希望を尋ねた上で、それぞれが楽しいと思える現場を紹介し、現場から色々な話を聞いたり、フィールドワークを行なったりしていました。
 この日のゲストは、豊中市インクルーシブ教育経験者で授業にもゲストで来て下さった障害当事者の上田哲郎さんや、本学院生で食物アレルギーの子どもの母親で子のアドボカシーの観点から研究している小谷智恵さんにお越しいただき、質問をしていただきました。
 それぞれのグループの発表内容は、2023年12月2日に開催された同志社社会福祉学会のポスター発表と同一のものなので、前回投稿記事をご参照ください。

写真 メディアに関心をもつ学生たちが発表している様子 

 質問タイムとその後のディスカッションでは、いくつかの重要な質問がなされました。たとえば、子どもが「普通学級の場にはいたくない」と言った場合にどのように対応すべきか、ということでした。上田さんのエピソードの中で、小学校低学年時に特別支援学校から普通学校の普通学級に転校したばかりの頃、教室内の音や授業スタイルの違いにしんどさを抱え、支援学級に行きたいと担任教員に求めたところ、その担任教員はござを敷いて後ろで座っていてもいいからということで、普通学級にいることを勧めました。この対応が子どもの意思を尊重するという観点からどのように考えるべきなのかということが疑問点として提示されていました。

写真 一人の学生が、自分の受けた豊中市のインクルーシブ教育の経験を話してくれました 

 上田さんからは、結果的に、あのとき支援学級に行っていたら、自分が他の生徒とは違う存在として見られてしまい、クラスで起きている出来事も体験することができなかったこと、そして、クラスに留まることによって普通学級のスタイルにも慣れ、多くの友人を作ることができたので、担任教員には感謝しているとコメントしていただきました。これは、結果的に良い結果がもたらされたから良かったのか、もし良い結果ではなかったら悪い対応となるのか、と学生たちは悩んでおりました。
 あるいは、学生からは、子どもの置かれた条件を考えることの重要性が指摘されました。つまり、特別支援学校に長年いたため普通学級に慣れていなかったことが問題であり、このような環境に置かれていたことを考慮して、普通学級での体験の機会を提供すべきだという意見でした。

 子どものアドボカシーは、まさに判断能力に限界のある人々の意思決定をどう支えるのかということと関係します。上田さんも語っていましたが、担任教員の教育や社会に対する思想や価値観が問われるのだと思います。子どもがそう言ったらその通りにするということではなく、インクルーシブな教育や社会とはどのようなものかというビジョンをしっかりと持ち、それを実現させるために子どもへの配慮を実質的に保障していく努力をし続けることなのだと思います。
 今の日本の教育の現状を考えると、このような教育環境を実現させていくことにはかなりの困難が伴います。ただし、豊中市は、一人ひとりの担任教員だけではなく、相互の教員間の支え合い、さらには、学校と家族とのつながりの中で、システムとしてインクルーシブな教育環境を実現させているのだと思います。私たちは、このような実践から多くのことを学ぶ必要があると改めて感じました。ご参加してくださったゲストの皆様、シンポジウムを主催してくれた学生の皆様には感謝申し上げます。

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