2024年 子どもの権利を考える~子どもアドボカシーセンターOSAKAの訪問

2024年6月30日(日)の午前10時~13時まで3回生鈴木ゼミで、大阪府堺市にある子どもアドボカシーセンターOSAKAを訪問し、子どもアドボカシーの取り組みについて、設立者で現在熊本学園大学で教員をされている堀正嗣さんと、事務局長の奥村仁美さんからお話をお伺いしました。当センターは1970年代に子ども情報研究センターとして始まった組織です。2020年に堀さんを中心とするメンバーが、科研費の研究プロジェクトとしてニーズ調査を行い、独立アドボカシー研究所として展開してきました。
2年前からモデル事業として開始し、現在は改正児童福祉法の第2種社会福祉事業である子ども意見表明権支援事業として補助を受けて、活動をしています。大阪府、大阪市、堺市、奈良県から委託を受けて、それぞれの地域で活動しています。

子どもアドボカシーセンターOSAKAの事務所は駅前の
交通の便の良い場所にある
当センターでは、アドボケイト35名(男性7名、女性28名)おり、19歳~70代までいて、50代が多いということです。事務局スタッフは5人(常勤2名)で運営しています。アドボケイトとは、子どもと関わり、子どもの声や要望を聞き、権利擁護をする人の名称です。当センターでは、子どもアドボカシー学会が主催する一定の研修を受けた人がアドボケイトとして認定されます。研修は基礎講座と実習によって構成され、イギリスの子どもアドボカシーのカリキュラムに依拠しています。研修会も定期的に行われ、月1回のスーパービジョンを受けます。研究者1名が各アドボケイトのチームに関わり、アドボケイトが感じるジレンマや実践課題について共に考える機会としています。
活動日は、一時保護所が月2回、児童養護施設や障害児施設が週1回で、一人のアドボケイトが週1回あるいは月1回の頻度で関わるそうです。定期訪問のときに一人の子どもに話を聞くこともあるそうですが、毎回、アドボケイトがチームをつくって活動をしています。一人のアドボケイトが様々な子どもと関わるのが基本ということでした。まずは、集団を対象としたかたちで基盤をつくり、一人の子どもに関わる必要があるときには子どもが信頼できる人がアドボケイトしていく個別アドボカシーを行なうそうです。一般的には、アドボケイト二人が一施設に入るそうです。場合によっては、児童養護施設100人の子どもと関わるところもあります。アドボケイトは、普段はNPOで仕事をしている人、会社員の人、学生、行政職員、児童相談所のスタッフ、小学校の元教員と様々です。

子どもアドボカシーセンターの事務局長の奥村さんと学生たち
これまでの活動を通してセンターでは次のように考えているそうです。つまり、子どもの専門的な経験が必要ではありますが、資格があるということではなく、子どもと関わる資質があることが大事ということです。専門家の顔をしている人は難しく、「専門家の帽子を脱ぐ」ことが大事にされています。アドボケイトは、子どもをアセスメントしないこと、こども主導で、始まりも終わりも子どもが決めることを大事にしています。また、サービス提供から独立しているという独立性が何より大事にされ、相談機関につなげることが仕事ではないということです。子どもが望めばそのような場合もありますが、ソーシャルワーカーとは役割が異なることが意識的になされています。なぜなら、ソーシャルワーカーは組織や専門職としての責任ゆえに重要な役割を果たしますが、一方、子どもの思いや希望を聞くことなく、その結果として、目黒区の虐待死事件など様々な問題を引き起こしてきたのも現実だからです。アドボケイトの立ち位置は、まさに弁護士のような存在といいます。権限や責任をもたないからこそ、本人の意見を大事にできるということです。
意思決定支援の議論では、「最善の利益」ということが言われます。つまり、子どもの意向に関わりなく、子どもにとって望ましいと専門家が判断する利益を実現するために行動することです。しかし、アドボケイトは、「最善の解釈」を大事にします。すなわち、その子が何を望んでいるのかという「View」を大事にし、子どもの気持ちを尊重することを徹底するのです。アドボケイトとソーシャルワーカーは役割が異なります。このことを理解した上で、子どもの意見表明権を実現するための社会的仕組みがどうあるべきか、引き続き学生たちと考えていきたいと思います。貴重な経験をお話くださったアドボケイトの皆様に心より感謝申し上げます。

