2025年 高齢者の社会的孤立と住民自治~高島市・高島市社協のゲスト講義

 2025年7月7日に、鈴木ゼミ3回生の授業に、高島市の清水さん、高島市社会福祉協議会の松本さん、西村さん、宮田さんにお越しいただきまして、ゲスト講義をしていただきました。廣野ゼミの3回生の皆さんにも参加していただき、合同でお話を聞きました。この日は、7月25日に高島市・朽木地区で行うフィールドワークの事前説明という意味合いもありました。

 第一に、清水さんからは、高島市の取り組みの概要についてはお話いただきました。高島市で人口減少が進み、一人暮らしの高齢者の数が増えていく中で、生きづらさを抱えた人たちが増えているというお話をしていただきました。こうした中で、市町村には地域住民が互いに支え合う包括的な体制の整備が求められていて、高島市では地域の中で「つむぎあいプロジェクト」を進めていることについて説明していただきました。例えば、地域で高齢者が通える場所、生きづらさを抱える若い人たちが集まる当事者の場が作られているということでした。

写真:高島市の清水さん

 第二に、高島市社会福祉協議会の地域福祉課課長の松本さんからお話を聞きました。社会福祉協議会には、1)住民が参加して活動をし、話し合う協議体の機能、2)地域をよくするための運動体としての機能、3相談・コミュニティーワークといった専門職の事業としての機能ということでした。具体的には、経済的困窮の問題、単身化による身寄り問題、孤立・不登校・引きこもりの問題、ヤングケアラー・ダブルケアの問題、人口減少の過疎地の問題などの地域課題に対処しているということでした。

 こども食堂が高島市には11カ所あり、ターゲットをあまり限定せずに、地域の中でのつながりをつくる取り組みがなされているそうです。こうした場所で、子どもたちが学校が終わった後に夕飯の時間に来て、施設のスペースで地域のボランティア、教員OBが晩ご飯を一緒に食べたり、一緒に宿題をしたり、施設によってはお風呂も一緒に入ってもらったり、自転車に乗れない場合には施設職員と一緒に自転車の練習をしたり、といった取り組みがなさているということでした。また、相談機関同士がつながる職員の連絡会の取り組みも行われているということでした。

写真:高島市の松本さん 

 第三に、高島市社会福祉協議会地域福祉課主任の西村さんから、お話をしていただきました。地域福祉課は、課長と主任以下6名のコミュニティーワーカーが旧各町村域、いわゆる中学校区にそれぞれ1名ずつ配置されているということです。また、住民福祉協議会の事務局の担当をしながら平均1人30区・自治会を担当しているということでした。

 まず、高島市には202の区・自治会があって、その中で小地域の福祉基盤として福祉推進委員会があるそうです。福祉推進委員会は集い、見守り、助け合いの三つの活動をしています。例えば、住民交流の場づくりのワンコインカフェや、見守りネットワーク活動がなされているそうです。 次に、旧町村域ごと、中学校区で活動をする住民福祉協議会があるということです。住民福祉協議会の活動として、新旭住民福祉協議会の取り組みについてご紹介していただきました。さらに、市の地域福祉推進計画の推進と策定をする福祉のまちづくり推進委員会の活動支援があります。とりわけ、災害時の取り組みである災害ボランティアセンターについてお話をしていただきました。

写真:高島市の西村さん

 最後に、 高島市社会福祉協議会の地域福祉課主任の宮田さんから担当する朽木地区の取り組みについてお話をしていただきました。人口1444人、世帯数720世帯、高齢化率48.68パーセント。中には高齢化率が100パーセントの集落もあり、65歳以上の年齢だけの集落があるそうです。集落の数が22あり、うち5軒から9軒という1桁の数字の区が7集落あるそうです。保育園と幼稚園23人、小学生は全校32人、中学生は全校31人ということです。

 医療機関は朽木診療所一つだけで、買い物もカネハチというスーパーとローソンしかなく、金融機関は郵便局だけです。また、移動手段の問題があります。例えば、歯医者、整形外科、耳鼻科のある隣町に行こうと思うと家族に連れて行ってもらうか、1時間に1本しかないバスに乗って行くしかないそうです。こうした中で、朽木住民福祉協議会が支え合いのネットワークを作っているというお話をしていただきました。

写真:高島市の宮田さん

 4人の方のお話の後に、鈴木ゼミの3回生から、事前に考えてもらった質問をしてもらいました。学生からは、「支援からこぼれた人たちを支援につなげていくときは分野分けをしていくのか」という質問がありました。これに対しては、清水さんから、以下の事例をお話していただきました。

 「学校の息がかかってるやつとは会いたくないっていう人が同じく別の場所で、例えばガンダムのことをしゃべるカフェがあるから来えへんって言ったら来はるんですよね。だから1時間とか1時間半ぐらいガンダムの話だけ延々とするんですけど、実はその場所には学校の先生とか、いわゆる私らみたいなもんがいて、こっそりガンダムの話をしながら高校とかどう思てるん?とかそんな話をしていて、結果としてその子は通信制高校に行かはりました。中学の先生って、中学に行くこと自体がやっぱり拒否だったんですけども、ガンダムの話をする場に先生が来るんやったら、しゃべってあげてもええでって言ってそこで面接をしはりました、みたいなことがあります。」

 身近な居場所を通して、分野を超えた連携がなされているということでした。
 続けて、学生さんからは、「参加者を募集する際にチラシを用いてらっしゃるのか」という質問がありました。これに対して、西村さんからは「ほとんどが口コミです、お母さん同士のつながりとか、そういった所でどんだけチラシを配っても口コミが一番かなと思う。」と説明していただきました。コミュニティのつながりが深いからこそ、できることだと思いました。

写真:学生の質問に答える清水さん

 この日は、高島市のコミュニティづくりの概要についてお話を聞いて、学生たちも、関心をもってくれたように思いました。人口減少が進む地域だからこそ生じると課題と、こういう地域だからこそ都市部にはできない福祉活動の魅力について、学生さんに考えてもらう機会になったのではないかと思います。高島市、そして、高島市社協の皆さんには、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

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