2025年 高島市・朽木地区のフィールドワーク~高齢者の住民自治を考える

 2025年7月25日に、鈴木ゼミ3回生と院生の6名、廣野先生と私とで、高島市・朽木地区の住民福祉協議会を訪問しました。午前中は、当協議会が毎年行う、地域の子どもたちを対象とした「流しそうめん」のイベントに参加し、午後は、住民福祉協議会の皆さんへインタビューを行い、最後に、地域の居場所ともなっている丸八百貨店を訪問して、お話を聞かせてもらいました。

 午前中のイベントでは、主に男子学生が地域の男性高齢者のメンバーと共に竹藪に行って、流しそうめん用の竹を刈り、その竹を専用機械で削って、準備をするお手伝いしました。女子学生は、朽木地区住民福祉協議会が週1回運営する高齢者サロンの場に参加する100歳の高齢女性の方を含めて、地域の方々にお話を聞いて、交流しました。

写真:流しそうめん用の竹を切る様子

写真:地域の人と竹を切る様子

写真:サロンを訪問した100歳の女性高齢者の方と話をする学生

写真:子どもたちが竹を切るのを手伝う様子

 地域の子どもたちは、未就学前の子から中学生までの約30名が集まり、流しそうめんのための竹の器づくりを熱心に行い、そうめんをおいしそうに食べていました。学生たちは、たくさんのそうめんを流し、子どもたちとも会話をしたりして、楽しく過ごしているようでした。子どもたちは、年に1回のこのイベントを毎年楽しみにしているようで、お互いに顔見知りということもあり、元気に過ごしておりました。

写真:学生たちが、そうめんを流す様子 

 午後は、朽木住民福祉協議会の会長の海老澤さんや活動メンバーの皆さんから、朽木地区の高齢者の置かれている現状や課題、協議会としてどのような取り組みを行っているのかというお話をお伺いしました。

写真:朽木地区の地図を見ながら、海老澤会長から話を聞いている様子

 朽木地区は、2025年5月時点で人口は1,444人で、高齢化率は約50%。22の集落がありますが、集落によっては高齢化率が100%のところもあります。
 こうした中で最も大きな課題は、移動になります。このため、当協議会では、外出サポート隊を作り、車を運転できない人が、診療所やスーパーに行く人のために送迎をしています。年間1000円会費、保険代20円、1キロ30円のガソリン代が利用料です。運転者は約10人、利用者は約15人で、皆が高齢者です。
 二つ目の課題は、ヘルパーステーションが朽木にはないために、隣町からヘルパーを派遣してもらう必要があり、在宅で介護サービスを受けることができないということです。介護保険サービスの保険料を支払っているにも関わらず、サービスを利用できないという不公平な事態があることが分かりました。この結果、家族で介護ができなくなると、施設に入所することになるそうです。朽木地区には一つの特別養護老人ホームがあり、入所するのであれば、住み慣れた地域のこの施設に入所を希望する人が多いそうです。
 三つ目の課題は、地域の社会資源を維持するのが難しいということです。例えば、朽木地区には、スーパーが一店舗ありますが、ここは店長が地域のために貢献したいという志があるためになんとか維持できているそうで、経営的には厳しい現実があります。地域住民は、このスーパーを維持するために、他のスーパーと比較すると価格が高くとも、この店で購入する場合があるそうです。人口減少が進むことによって、利用者数が減少すると、経営自体が困難になるために、社会資源が減少していくという問題が生じます。また、銀行が郵便局しかないために、滋賀銀行と農協が毎週、車にATMを積んで窓口の人ともに訪問してくれるのだそうです。
 四つ目の課題は、人口が減少し、集落同士が離れているために、安否を確認することが難しいということがあります。このため、人が孤立することを防止するための住民同士の取り組みとして、例えば、各集落で見守り隊をつくったり、牛乳配達や新聞配達をしている人が何か異変を感じれば社協や支所に伝えたりすることをしているそうです。お互いに知っているからこそ、見守ることができることについて、福祉協議会のある活動メンバーが次のように語っていました。

 「一人一人がみんな知り合ってるので、そんな中で、今日、出てこおへんな、これはせえへんなっていったら見てきてとか、そういうふうな助け合いの輪ができてるんで」

 小さなコミュニティで、互いのことを知っているがゆえに、人と人のつながりが、セーフティネットの役割を果たしていることが分かりました。

 今回の訪問を通して、生まれ育った場所に暮らし続けたいという思いをもって、皆で支え合いながら生活をしているのが伝わりました。参加した学生からは、感想として、人と人の関係が密であることに感銘を受けたことが語られました。ある学生さんのコメントです。

 「最初にお話しさせてもらったときに、それぞれの方がお互いのことを、いいところを言い合ったりしてたっていうか、いいところがたくさんあって、信頼関係とかもすごい伝わってきて、その関係性がいいなって感じました。あと、子どもたちも外で流しそうめんを楽しんでて、中ではおばあちゃんとかおじいちゃんとかが楽しそうにお話しされてて、この空間でいろんな方の居場所になってるんだなっていうの、感じました。ありがとうございました。」

 この後、丸百貨店を訪問して、そこでも高齢者や子どもたちの居場所になっていることを教えていただきました。

写真:丸百貨店前にて

 このたびは、フィールドワークの調整をしてくださった高島市及び高島市社会福祉協議会を始めとして、朽木地区福祉協議会の皆さんにも改めて感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。また、学生さんたちも、暑い中、お手伝いご苦労様でした。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です